テレワークの海外事情!先進諸国から見えてくる日本の現状と進むべき道とは

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衝撃的なリモートワークとの出会い

リモートで仕事をするという概念、「リモートワーク」という言葉を初めて聞いたのは、今を去ること20年も前のことになるでしょうか。

東京のあるコンサルタント会社に入社したときのことです。
その会社は、日本でもワークプレイスのイノヴェイターとしての立場上、ペイパーレスやリモートワークといったことを全社的におこなっていたという、あの頃では最先端の会社のひとつでした。オフィス内には、社員一人ずつのデスクや机上電話もなく、ノートパソコンと携帯電話(PHS)を社員全員に支給して、システム上にある案件には日本全国どこからでもアクセスを可能にしていました。

そんな夢のような次世代的オフィスに初めて働き始めたときのこと、あのときの衝撃は、今でも忘れられません。
と同時に、最近ではリモートワークを禁止するような企業も出てきて、イノヴェーションが後戻りしているかのような話も聞くので、さらに驚くばかりです。

リモートワークの問題点

IBMやGoogle、Yahooなどの最先端技術を提唱する企業は、いち早くリモートワークを取り入れたはずでしたが、ここにきて、少しばかり後退をし始めたというのです。

さて、企業がリモートワークを禁止するほどの問題点があるとすれば、どんなことか少し考えてみましょう。

リモートワークの問題点1

まず、リモートワーク社員は自宅で働いているため、長時間にわたって仕事をしてしまい、生活ペースが乱れやすい傾向があることでしょう。適当な時間でブレイクをとるようにして、効率よく仕事をすすめていけるかどうかが課題になるでしょう。

リモートワークの問題点2

次に、リモートワークは、企業側にとって社員の労働時間の管理が難しく、適切なマネジメントがされていなければ、非常にずさんな勤務実態になってしまいがちです。しかも、それに上司が即座に気づけないということが問題です。

Yahooでは、上司が知らぬ間に社員が自分の会社を立ち上げていたり、副業をしていたというようなことがあるようです。私自身も、過去の職場で休職中の身で他の企業でアルバイトをしていた社員がいたという話を聞いたことがあります。これらは、一部のモラルの低い社会常識に欠ける人間が、リモートワークのネガティブな問題を露呈してしまったケースと言えましょう。

リモートワークの問題点3

また、IBMでは、リモートワークの普及によって、全体のチームワークやコミュニケーションが欠如したととらえているようです。これは、通常のオフィス勤務であってもよく課題になることなのですが、IBMではリモートワークのデメリットとして大きく取り上げているのが興味深いところです。

リモートワークの場合、まず、その働き手が就労時間の自己管理がきちんとできる責任感のある人間であり、グッドコミュニケーターであることが、根本的に要求されることなのではないでしょうか。

これらは、リモートワークのみならず、通常のオフィス勤務環境においても同様のことではないかと考えます。

リモートワークの問題点4

その他に、リモートワークの問題点をあげれば、IT端末を使った仕事以外では、あまりメリットを感じないという点でしょうか。しかし、考えてみれば、今の時代は誰でも何かしらの形でリモートワークに関わらずに仕事はできません。
たとえば通常のデスクワークでも、今は資料作成やメールなどでPCを使っているので、秘書や総務関連の業務でも、事情によっては在宅で仕事をする場合があります。

リモートワークの問題点5

さらに、もうひとつ問題点としては、セキュリティ対策ではないでしょうか。
企業側がきちんとしたルールを作り、社員にそれを教育してからリモートワークを導入させることが大切なことでしょう。

アメリカ発祥のリモートワーク

これまでリモートワークの問題点を5つほどあげてきましたが、それでは、この革新的なワークスタイルのメリットをどう生かしていけばよいのか考えてみましょう。

リモートワークのパイオニア国であるアメリカのIBMは、そもそもフルタイムで在宅勤務が主流だったようです。

アメリカは国内国土が広いので、共働き夫婦のそれぞれの職場が離れた都市になるケースもあり、リモートワークはカップルが別居することなく遠方でも希望の会社に就職することができる、画期的なシステムのようです。

次に、ヨーロッパでのリモートワーク事情はどうか検証してみます。ヨーロッパ主要国の様子を見てみましょう。

イギリスのリモートワーク事情

イギリスは、欧州諸国の中でもリモートワーク普及率がもっとも高い国のひとつで、リモートワークをさまざまな意味で合理的な労働方法としてとらえているようです。

イギリスでは、6歳以下の子供がいる場合や特別な家庭の事情を抱えていたりする場合、それを上司に申請すれば、企業側は臨機応変に状況に対応することになっています。ですから、育児期間や家族の病気や介護などで、週に数日を在宅でリモートワークをしているケースがよくあります。また、大企業などでは、BCP(Business Conituity Planning)を想定して、緊急時に外部から社内のシステムにアクセスできる権利を持っている社員が多数います。

インフラが老朽化して、交通事情が悪いロンドンでは、これが想定外に機能することが多く、大雪やハリケーン、ストライキなどでロンドン市内に交通マヒが起きても、自宅で仕事をすることになっています。イギリスのリモートワークが普及している理由は、子育てや交通事情の悪化だけではありません。ロンドンでは、EU圏やその他の国々からの移民が増え続けたため、住宅の数が不足していて、住宅価格の高騰が社会問題になっています。

イギリスで働く人々の自宅は、職場からどんどん遠くなるという現象が起きています。
通勤にかかる時間や交通費を節約するという意味で、リモートワークは利用価値が高いと言えましょう。
イギリスの企業の40%弱は、在宅勤務を奨励しているといわれています。ワーク・ライフ・バランス施策は、この国の政府が抱える大きな課題のひとつでもあります。

フランスのリモートワーク事情

フランスでは、14%の企業でリモートワークの導入が実現されています。
フランスでも移民が増え続けているため、パリに人口が一極集中するのを避けることが、国主導でリモートワークの普及をすすめる理由のひとつのようです。

リモートワークが紹介された当初、フランスではインターネットの普及が遅れており、また、保守的なフランス人気質が劇的な変化を嫌う傾向もあって、リモートワーク導入が他の国に比べて遅れたようです。
2004年になると、労働組合や企業の代表がフランスにもリモートワークを導入しようという取り組みを始めました。

しかし、フランスには非常に硬直的で厳格な労働法の問題があって、最初はなかなかうまくいきませんでした。

リモートワーク自体が成熟していないレベルであるのにもかかわらず、フランス政府はワークスタイルを変えようとして、法改正のときに、勝手にリモートワーク導入の実施日を決めてしまい、事態が硬直してしまったようです。

現在、フランスの労働組合側はリモートワークをおおむね支持という考え方のようですし、国の方も動各地方にリモートワークセンターというものを設置して地方のテレワーカーを支援しています。(2007年の段階で18カ所)

フランスにおけるリモートワーク事情は、リモートワーク/モバイルワークという非常に曖昧な意味あいものをどのように定義し、法律で保護していくのかが注目されるところです。フランスの企業にも、リモートワーク/モバイルワーカーなどの定義や目標を明確にしないとトラブルの原因になるのではないか、という意見があるようです。

ドイツのリモートワーク事情

ドイツでは、リモートワークの普及率は約22%といわれていますが、コ・ワーキングスペースやSOHOのような形態(「Multi-locational eWork」)が主流のようです。

ドイツでリモートワークがいち早く導入されたのは公共機関で、ハンブルグ市役所では2001年からリモートワーク導入を開始し、10万人の公務員のうち2万5000人の職員に2/3の勤務時間を自宅でリモートワークさせることにしました。

一方、ドイツの一般企業では、リモートワークというよりはむしろフレキシブル・ワークに対する取り組みのほうが進んでいるようです。ワークシェアやリモートワークの導入より一歩進んだ労働環境の改善に向かっているというところが、さすがのドイツです。

ドイツでは、政府が奨励する数多くのフレキシブル・ワークの法定モデルをつくり、フレキシブルな働き方を提供できるようにしています。各企業は、適切なモデルを選んで活用しています。在宅勤務については、特に定められたものはありませんが、従業員と雇用主との合意によっておこなわれているようです。

リモートワークと今後の日本人の働き方

リモートワークの企業導入率が約11.5%とされる日本では、いまこそ日本人特有の働き方を考え直すときが来ているのではないでしょうか。日本には、交通機関もストライキもない国なのですが、諸外国に比べて非常に残業時間が多い国です。どこの国でもそれぞれに働き方事情があってリモートワークを導入しるようですが、日本の場合はどうなのでしょうか。リモートワークは、最良の働き方改善策になるのでしょうか。

おそらく、今、日本がやるべきことは、まず、高度経済期から続く日本独特のワーキングスタイルを一新するということでしょう。時代にあった働き方をするということは、すなわち日本の社会全体が変わるということを意味するのかもしれません。もし、会社が様々な意味で働きやすい環境に変われば、社員は毎日、職場に行くこともいとわなくなるでしょう。
事情にあわせた時短やフレックスタイム制度を利用できて、年に一度の2週間休暇が取れるなら、子育てのための時間もとれるし、過度の疲労やストレスからも解放されるかもしれません。

日本の企業は、リモートワークを導入する、しない、だけにしぼって議論するのではなく、もっと多岐にわたって社員にやさしい労働環境を創造していくことにも尽力すべきでしょう。たとえば、育児期間の女性が働きやすいように託児所の設置などを考えることも一つの案でしょうし、仮眠室やマッサージなどを提供したりしてもよいでしょう。

社員が自宅で働くことでは得られない付加価値を企業側からもし提供することができれば、双方に素晴らしい結果を生むことでしょう。そこで働く社員が、会社で働く方が業務効率が良いし、居心地が良いと感じれば、リモートワークの導入についての大きな議論などは、ほとんど要らなくなるのかもしれません。
Googleの社員のように、リモートで仕事をする比率は低くなっていくのかもしれません。

各国で定年の延長や廃止が進む時代には、しばらくの間、休暇をとってリフレッシュする時間も必要になってくることでしょう。ヨーロッパには、長期休暇をとって過労を防止し、労働者の健康を守ろうという観点で考えられた「サバティカル休暇」というものがあります。すでに、フランス、ドイツ、スウェーデンなどで導入されています。

長期間勤務者に与えられる長期休暇で、使い道には制限がなく期間は1ヵ月以上で長い場合は1年間とることもできます。この休暇中に、大学に戻って勉強したり、留学したり、サイドビジネスを立ち上げたり、自分の将来のキャリアにとっても有効な期間を持つことができる有意義な休暇制度です。

また、高齢化が進む日本社会のことを考慮して、日本でもドイツのような段階的な定年退職制度を取り入れていくことも、考えていくべきでしょう。政府は、もっとドイツや北欧諸国の例を参考にして、ワーク・ライフ・バランスの充実や、さまざまなワーククスタイル、無料保育、育児休暇などについて、早く取り組むべきなのでないでしょうか。

企業も、国の政策に頼るばかりではなく、積極的にワーク・ライフ・バランス等について議論を深めていくべきでしょう。国民は、ひとりひとりが働くことの意義や価値観をもう一度考えて、どうしたいのかを主張していくことも必要かもしれません。

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