テレワークの導入事例から見えてくる共通したメリットとは?
テレワークの導入事例から見えてくる共通したメリットとは?
「人手不足」という言葉を最近頻繁に耳にします。
それもそのはずで厚生労働省の発表による今年3月時点での新規求人倍率は2.41倍と前月比で0.11ポイント上昇しています。昨年、平成29年度の平均有効求人倍率は1.54倍と、前年度比で0.15ポイントも上昇していて、これはバブル景気の絶頂期だった平成2年(1990年)7月の1.46倍を大きく超えています。
ポジティブな見方をすれば景気が回復して、就職市場が活況であると言えますが、反対に労働人口減少による人手不足が進んでいるということ表しているとも言えます。
このような深刻化する人材不足に対して企業の中では「テレワーク」を採用することにより、人材の確保と労働生産性の向上を図ることへの関心が強まってきています。
それではテレワークを導入することでこれらの課題が解決できるのか?
また、具体的にどのようなメリットがあるのかを実際の導入事例などを交えながら考えていきたいと思います。
テレワーク導入の目的とメリットとは
企業が考えるテレワーク導入のメリット
「テレワークの導入に対する企業の意識」について、総務省がまとめた「平成29年版・情報通信白書」によると、テレワーク導入済みの企業が導入した目的としてあげたのが「企業競争力を高める」ことに関連する項目でした。
具体的には「営業力の向上」「顧客満足度の向上」「イノベーション創出の環境作り」「社内事務の迅速化」などがあげられています。また、「テレワーク導入検討中」という企業があげる目的で多かったのが「育児や介護による退職の防止」といった「福利厚生」に関するものでした。
企業が考えるテレワーク導入のメリットは「企業競争力を高めること」や「福利厚生面の充実を図る」といったことのようですが、実際にこれらの効果をあげられているのかを導入企業の事例をもとに見てみたいと思います。
導入事例からみる実際のメリット
メリット1:「生産性の向上」パナソニックの場合
1つ目の事例は「パナソニック」での導入事例です。
日本国内有数の総合エレクトロニクスメーカーであるパナソニックでは「ITを活用した働き方による生産性向上と社員のワークライフバランスの実現」を目的に2007年よりテレワークを導入しています。導入内容としては、間接業務従事者約45,000人を対象にモバイルワークや在宅勤務などを認めています。
実際の成果についてですが、導入後に毎年行われている「在宅勤務実施者アンケート」に対して7割を超える人が「生産性の向上があった」と回答をしていて、実際に「資料作成」や「企画構想」「プログラミング」などにおいて在宅勤務のほうが、従来のオフィス勤務と比べて平均で2割増し、最大で5割増しの効率アップが報告されています。
メリット2:「福利厚生の拡充」日本ユニシス
2つ目の事例は「日本ユニシス」での導入事例です。
IT関連のシステム事業などを行っている日本ユニシスでは2006年に「女性がもっと働きやすい会社に」という目的のもとに在宅勤務制度を開始しました。その2年後の2008年からは「ワークスタイル変革による多様な働き方の実現」を目的に全社員を対象とした在宅勤務制度を導入すると同時に、自社で開発をした「簡易テレワークシステム」活用して自宅やモバイルPCからでも社内イントラに接続ができる環境を整えています。
育児や介護などの家庭事情があっても勤労が継続できるだけでなく、働き方のダイバーシティ(多様性)実現に向けて積極的に取り組んでいます。
これ以外にも「コスト削減」による経済効果を上げる企業などもあり、実際に在宅勤務者が増えることでオフィススペースを物理的に削減することができ年間コストを1000万円以上削減することに成功している事例や、残業時間や光熱費などの削減などに効果があったという導入企業も多く存在をしています。
テレワーク導入のメリットまとめ
- テレワーク導入済み企業の多くは「企業競争力の向上」を目的としている。
- テレワーク導入を検討している企業の目的は「福利厚生」に関するもの。
- 導入効果として「生産性の向上」や「ワークスタイルの拡充」が事例としてある。
- 「オフィスコスト」や「人件費」においての経済効果も導入事例のなかであがっている。
テレワーク導入による最大のメリットとは?
ここまで「テレワーク導入のメリット」について企業背景や導入事例を紹介してきましたが、最大のメリットとは何になるのでしょうか?企業経営という観点から見るとそれは「経常利益の拡大」となります。
なぜテレワークを導入することで「経常利益」が拡大するのかというと、もっとも大きく影響を及ぼすものが「労働生産性」になるかと思います。同じ成果を上げるのにかかる「時間」「費用」「人員数」などの様々なコストを削減することができるということは前述の事例などからも実証されています。
それ以外にも「会議が減った」「メンバーとのコミュニケーションの質があがった」など、導入以前は課題と考えられていたような「社内コミュニケーション」が、テレワークを導入することで所要時間や開催頻度が減るうえに、1回の質が向上するといった効果が具体的にあげられていて、その結果として成果創出に活動を集中できるうえに、活動の質そのものも向上することが確認されています。
このように日々の活動における様々なコストが減り、創出される効果が同等もしくはそれ以上となることで労働生産性が改善され、経常利益アップというメリットを生み出しています。このことは総務省の調査でも報告されていてテレワーク導入企業と未導入企業における3年間の売上と利益の増加傾向に関する調査結果として、経常利益のアップのほうがより顕著な違いが確認されています。
テレワーク導入の最大のメリットまとめ
- テレワーク導入の最大のメリットは、労働生産性向上による経常利益のアップ。
これ以外にも、企業側ではコスト削減や災害時での事業継続など、様々なメリットが存在しています。
テレワーク導入による本当のメリットはこれからが本番!
テレワーク導入のメリットについて企業の視点から見てきました。
テレワークを導入することは、企業にとって将来を見据えた貴重な人材確保や現実的な目的として労働生産性改善による経常利益アップといった様々なメリットがあります。
ですが、これらのメリットは、導入初期段階に獲得ができる「短期的メリット」に過ぎません。
先ほどご紹介をした日本ユニシスでも、在宅勤務を利用する社員の人のなかには子供の急な病気などへの対応として一時利用する人も少なくないとのことでした。そういった意味では社員全体に「テレワーク導入の意味」というものが浸透しきっていないことも事実で、制度のメリットを最大限に発揮できているとはいいがたいのも、また事実です。
業務改善による利益アップというのは、単に今ある「無駄な作業」の削減でしかありません。
無駄なコストの削減に留まらず、働き方の自由度が増すなかで得ることができる「時間という有限資産」をもっと有効な形で活用できるようになることがテレワーク導入本来のメリットと考えます。
「時間という資産」はお金と違って増やすことができません。
貴重な時間をどこまで有効活用できるか?という意識こそが最も重要となってきます。テレワークの導入によって「時間への意識」が向上し、有効活用することが社員全体のスキルアップに繋がって、企業全体の市場価値をアップさせることができれば、変わりゆく社会環境や産業構造においても、より大きな業績を上げることができると思います。
先ずは直近の課題解決のためにテレワークを導入し、そこから更なる飛躍へと結びつけるためにも早めの導入が重要になると思います。