テレワーク・デイで働き方は変わる?参加企業の本音とは
テレワーク・デイで働き方は変わる?参加企業の本音とは
テレワーク・デイとは?
2017年7月に総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府主導により、東京都及び経済界と連携し、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした働き方改革の国民運動が展開されました。
2020年東京オリンピックの開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、交通機関や道路が混雑する始業から10時半までの間、一斉テレワークを実施する企業・団体を募集しました。
実施の背景と目的
2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会では、交通混雑によりロンドン市内での通勤に支障が生じるとの予測から、市交通局がテレワーク等の活用を呼び掛け、これにロンドン商工会議所をはじめとする企業や市民が賛同する形で、たくさんの企業がテレワークを導入しました。
結果として会期中の交通混雑を回避できたことに加え、テレワークを導入した企業では、事業継続体制の確立、生産性や従業員満足の向上、ワークライフバランスの改善等の成果が得られたと報告されています。
2020年の東京競技大会でも、国内外から大勢の観光客が集まり、大会会場周辺で大変な交通混雑となることが予想されるため、ロンドン大会の成功にならい、2017年から2020年までの毎年、開会式に相当する7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけて、テレワーク一斉実施の予行演習を呼び掛けて参ります。オリンピック・パラリンピックを契機として、全国的にテレワークの普及が進み、働き方改革のレガシーとなることを目指します。
つまり、政府が働き方改革を推進していく一環で、オリンピックを契機にテレワークを普及させ、生産性向上を図る取り組みでした。
また、テレワークを実施する団体や企業と合わせて、テレワーク・デイを応援する団体も募集され、290件が登録されました。
テレワーク・デイの応援とは、大きく分けて「ノウハウの提供」、「ワークスペースの提供」、「ソフトウェア等の提供」といった協力の仕方があり、それぞれ68件、102件、120件が登録され、「ソフトウェア等の提供」が最も多くなりました。国家主導で推進された取り組みを大きなビジネスチャンスととらえた団体が多かったことがわかります。
なお、ノウハウの提供とは、すでに先駆的にテレワークを実施している団体が、そのノウハウを広く共有し、これから始める団体へのアドバイスとなるものです。「テレワーク推進企業ネットワーク」というものがあり、ホームページ上で主に「ICT」、「労務」、「効果」、「その他」といった観点で、取り組み内容が公開されています。
ワークスペースの提供とは、 参加団体や参加企業がテレワークを実施する際、主にモバイルワークやサテライトオフィスとしての、「普段とは別の働く場所」を提供するものになります。主にコワーキングスペースの提供が多く、中には大手カラオケ店がカラオケルームをワークスペースとして提供するといった事例もあります。
ソフトウェア等の提供とは、 テレワークを実施するために必要となるICTサービスの提供を指します。様々な企業や団体が、通信環境をはじめとするITツールを提供し、参加団体や参加企業の働き方改革を後押ししました。
そもそもテレワークとは?
国のICT利活用を促進している総務省によると、「テレワーク」とは、「ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義されています。
ちなみに語源は、「tele=離れた所」と「work=働く」を合わせた造語です。
テレワークは働く場所によって、在宅勤務(自宅での勤務)、モバイルワーク(顧客先や移動中の勤務)、施設利用型勤務(サテライトオフィス等での勤務)の3種類に分けられます。
なお、これらの実施頻度によって、常時テレワークとテレワーク勤務が週1~2日や月に数回、1日の中での一部の時間などに限られる随時テレワークがあり、上の3つの種類のテレワーク形態と同様に実際は様々な形態で導入されています。
テレワーク・デイの実施結果について
総務省および経済産業省の「テレワーク・デイ実施結果報告」によると、テレワーク・デイに参加した団体は992団体でした。参加業種は情報通信・ITが最も多かったものの、幅広い業種や規模の企業や自治体が参加しました。
テレワーク実施者数は6万人以上にものぼるとのことです。実施時間は「終日」が最多で、実施場所は「自宅」が最も多く、次いで「訪問先・出張先」、「サテライトオフィス」の順で多い結果となりました。
テレワーク・デイの目的である交通混雑緩和効果については、テレワーク実施人数が最も多かった東京メトロ豊洲駅において、ピーク時間(8時台)の乗客減少量は-10%にもなりました。
その他の実施効果については、オフィスフロアの電力消費量は最大18%削減され、消費支出については「支出が減った」が64.5%と「支出が増えた」を上回る結果となりました。次年度に向けた課題としては、「実施日数の増加」、「参加団体数・人数の増加」、「効果測定の充実」が挙げられました。
テレワーク・デイで働き方は変わるのか?
ここから、実施結果の発表を踏まえてテレワーク・デイで働き方は本当に変わるのか?について考えていきたいと思います。今回、国家主導のもと、実施日を決めて参加企業が一斉にテレワークを実施する日を作り、多くの企業や団体が参加しました。
実施結果をみると、混雑緩和等の効果が出ていますが、これで働き方改革が進んだと言えるのでしょうか?
恐らく一日限りの取り組みで終わってしまった企業が多いのが実情ではないでしょうか。また、本来テレワークを実施したくない人も、半ば強制的に参加を余儀なくされたケースもあるかと思います。
大切なのは、テレワークが必要な人とそうでない人を、その人の個人的な環境、業務内容の双方の視点から判断し、適切な実施を推進する環境へ整備する必要があるかと思います。ちなみに筆者が勤める企業も、テレワーク・デイの参加企業で、当日は部署のほぼ全員がテレワークを実施しました。しかし、普段からテレワークを実施していない人もいたため、コミュニケーションに齟齬が生じたり、仕事がうまく進まなかったというデメリットについての声も聞こえてきました。
先ほど述べた対象者の選定と、継続的に実施することによる定着が不可欠であることも身をもって体感した1日でした。そういう意味では、新たな課題が見つかり、働き方改革の推進に役立った1日でもあったと言えます。
働き方を変えるには
働き方を変えるには、「企業や周囲のメンバーの理解」、「テレワーク等を実施できるICT環境」の構築が必須であると思います。まず、「企業や周囲のメンバーの理解」については、出産や介護により通常の勤務形態での労働が困難な人や、テレワークによる効率的な働き方をしたい人に対し、企業や周囲のメンバーが積極的にサポートする必要があります。
サポートといっても、「テレワークを実施できるICT環境」が適切に構築されていれば、通常の勤務形態と同じように仕事を進めることができるので、テレワーク実施者に対する意識を変えるだけで済むと思います。
次に「テレワークを実施できるICT環境」の構築についてですが、最低限必要な通信環境に加え、業務に必要な環境を構築する必要があります。
例えば、メールを送受信できる環境や、スケジュール管理、タスクの見える化、資料作成ツール、勤怠管理ツール、各種システムへのアクセス環境などがあります。これについては、各企業や業務内容、使用システムによって様々になります。
一度現状の業務内容と使用システムについて棚卸しを行い、適切なサポートを受けながらテレワークに必要な環境整備を早急に実施しましょう。あなたの取り組み、最初の一歩が日本の働き方を変え、生産性向上、国際競争力向上に繋がります。