RPAの自社運用ポイント~導入後に陥るジレンマを徹底解説~
RPAの自社運用ポイント~導入後に陥るジレンマを徹底解説~
ここでは導入後に陥るジレンマを3つお伝えしていきます。
- 人の管理が減る代わりに、他の仕事が増えるジレンマ
- 現場はロボットを推進したいが、IT部門は責められるのでやりたくないというジレンマ
- コスト削減のために導入したのに、費用対効果が見えづらいというジレンマ
以下、順次説明していきます。
人の管理が減る代わりに、他の仕事が増えるジレンマ
RPAは、人の労力を削減するために行うものです。
しかし、RPAを導入することによって、今度はRPA(ロボット)を管理する仕事や、他の仕事が増えることがあります。
安易にロボットを作りすぎて、収拾がつかなくなるので管理する必要がある
RPAを導入する場合、導入する要因の一つとしてあげられるのが高度な知識がなくても作ることができるという点です。
そのため、安易にロボットを作ると、誰が作ったか分からなくなった野良ロボットが多数徘徊しはじめます。増えた野良ロボットにより、セキュリティが甘くなり業務に支障がでてくることもあります。
このような事態を統制するために管理するとなると、管理コストが増えてしまいます。本来コスト削減のために導入したはずなのに、コストが削減できなくなってしまいます。
人件費を減らすためにRPAの業務範囲を拡げすぎて、逆に仕事が増えてしまう
RPAは定型業務以外に、複雑な業務も行う機会が増えてきています。単純なPC操作での自動化の業務から重要な業務へと対象が広がってくると、より一層効果がでる一方でプログラムが止まってしまった時のリスクが増大します。
予期せぬ停止が発生した場合、即時に修正することができない場合は「人海戦術」で行うことになります。
人員に余裕があれば良いのですが、もともと人件費を抑制するために導入している背景があると、人員の確保ができない場合、企業が受けるダメージは相当なものになります。
また、プログラムを起動させてから時間が一定期間過ぎている場合は、その作業を把握している人がおらず、人間が行うとしてもどうしていいか分からないという事態も起きてしまうことがあります。
現場はロボットを推進したいが、IT部門は責められるのでやりたくないというジレンマ
ソフトウェアロボットを導入すると、そのまま現場が管理するということになりやすいのですが、社内全体として広い視野で見てみると、ベストとは言いきれません。現場はあくまでも業務のフローが分かるだけで、システム技術やセキュリティ対策などのノウハウがあるわけではありません。
一方、情報部門が管理するとなると情報部門は厳密さを求めます。情報部門は最初から99.99%の品質でリリースしたがるので、現場の独断的な対応に対して嫌気がさしてしまうことがあります。現場は全体が見えていない可能性がありますが、IT部門は全体が見えているがゆえに自分で管理したいと思ってしまいます。
そのため、現場とIT部門に意見の相違が発生してしまうことがあります。
コスト削減のために導入したのに、費用対効果が見えづらいというジレンマ
そもそもRPAはコスト削減を目的としたものだったのに、実際やってみると効果が実感できず、社内で盛り上がっていかないということもあります。こうなると積極的にソフトウェア・ロボットを開発しないという悪循環になってしまいます。
RPAは導入してから本番導入するまでの間に
- 業務フローを洗い出し、業務のどこの部分をRPAにするのかを決める
- どのRPAツールを選択するかを決める
- ロボットを設計してみる
- 試用期間に実施してみて、計測評価する
- 運用のルールを定める
などのいくつものステップを踏むことになりますが、全てを自社で行える会社は少ないです。
そのため、業者に依頼することになりますが、費用が発生しますし、自社内の人材のリソースを使うことになりますので、トータルで考えると多額の費用がかかります。導入後も運用や保守の構築をしたり、ロボットを設計し直したりするなどの作業を要します。外部であれ社内であれ導入後も費用がかかるのが実情です。
一方、ロボット導入で一定の効果は確認できていても、結果が現場で局地的に起きているために企業全体では効果が分かりづらいというユーザーの意見は少なくありません。
社内でのガバナンス(合意形成)とは
上記のような3つのジレンマをなるべく最小限に抑えるためには、社内でのガバナンスが不可欠です。
ガバナンスとは合意形成のことです。
それぞれの立場の人が一緒のプロジェクトを行うことになりますので、どうしても摩擦や思い違いなどが起こります。
そのようなことがなるべくないように、運用する前に徹底的に社内での話し合いをする必要があります。
例えば、「人の管理が減る代わりに、他の仕事が増えるジレンマ」は、どこまでをRPAロボットが行うかという線引きをちゃんとする必要がありますし、運用ルールなども明記する必要があります。属人的にならないように、だれが見てもわかるようなルールにするとよいでしょう。
次の「現場はロボットを推進したいが、IT部門は責められるのでやりたくないというジレンマ」に関しては、現場・情報チームが一体となってRPAの専門チームを作るという合意を社内でとる方法があります。
最後の「コスト削減のために導入したのに、費用対効果が見えづらいというジレンマ」ですが、RPAロボットの導入は、時間が経つにつれて効果は増えていきます。
しかし、どうしても全社全体でRPAを認識するのが難しく、社内間でギャップが生じるかもしれないと考えるのであれば、社内の合意としてRPAチャットボットを導入するという選択肢も考えられます。
RPAチャットボットであれば、勤怠管理や営業先情報データベース、社内FAQ、システム障害情報などの社内全体で活用することができるので、社員全体が目にすることでロボットに対する理解が深まり、RPA運用の意欲が増す可能性があります。
RPAは運用を始めてからが勝負
以上のことから、RPA運用を始めるとさまざまなジレンマに遭遇することはお判りいただけたかと思います。そのジレンマをなるべく最小限に抑えるためには、社内での合意形成が必要です。しかし、それでも問題は発生します。
導入前には気づけなかった問題の発生や、その問題への処理方法です。
それらはその都度、対策していくしかありません。しかし、そのノウハウ蓄積が御社のチカラになっていきます。