日本の働き方はおかしい?イギリスと日本の働き方の違い
日本の働き方はおかしい?イギリスと日本の働き方の違い
渡英以来、20年間以上イギリスで働いてきましたが、昨年、夫の日本勤務の話がありました。そこで、日本で外資系企業に転職を希望しようと思い、外資系企業専門のジョブエージェントに連絡してみたのです。
すると、登録には日本語の履歴書が必要だと言われました。あの、文具屋さんやコンビニに売っているあれです。ワープロ書きはダメで、写真を貼って、印鑑を押す。
まさに30年前と同じようなものを21世紀の今でも要求されることに驚愕してしまいました。イギリスにあのような履歴書は存在しませんし、印鑑も持っていないので、やむなく今回の登録は辞退することにしました。
日本という国は、画一的なことを尊重するところであったと改めて気づき、相変わらず昭和の負の遺産を引きずっているんだ、とすっかり落胆してしまいました。そして、日本ではもう二度と働けないのかもしれないな、と実感したのです。
履歴書
イギリスで職を探す場合、まずジョブエージェントに履歴書(Carriculum Vitae)を提出しますが、形式は自由で、できるだけ印象的で読みやすいレイアウトで作るものです。イギリスには、CVを作ってくれるサービスさえあります。
日本のように、写真も、生年月日も、性別さえも書く必要はありません。なぜなら、先方の知りたいことは、これまでの職務内容であり、その人のキャリアが知りたいからなのです。新卒ならまだしも、日本のように数十年前の学歴なども書くことはなく、学位と資格を書いたら、職務経験を重点的に書くようにします。
就労する
日本では新しい職務につくときには、人事部経由で契約書とジョブ・ディスクリプションを渡されます。
雇用契約書は、労使間でサインしたものを1部ずつ手元に保管することが義務づけられています。契約書をきちんと交わしてから、始めて就業となります。
ジョブ・ディスクリプションは、その中に明記されていないことは、原則的にしないことになっているので、勤務が始まる前によく読んで了解しておくことが大切です。
たとえば、上司が内勤の女性にお使いなどを頼んだりするような、職務内容に書かれていないことをすることは、イギリスでは原則的にありえないのだそうです。
初出勤日の就労前には必ずガイダンスの時間ががもうけられ、コーポレートガバナンスや就労規則などについて、指導を受けます。これらは、イギリスは労働法や労働組合のしくみが日本とは少々違っているので、労働者が保護されているということの表れなのでしょうか。
月給制や年功序列について
イギリスの給与は年俸制、個別契約制です。ボーナスはその年の業績如何で支給されるかどうかが決まります。
年功序列は存在しませんが、その人のキャリアや功績によって入社時に個別に給与額が決定され、通常年に1~2回、上司との面談があり、昇給額についても話し合われます。
同じ仕事をしている社員同士の給与額がまったく違うということさえあります。どの会社も年俸制なので毎月の給与額は同額ですし、最近は、一般職でも残業代が付かないことの方が多いようです。
テンプ社員とマニュアル化
イギリスの会社では、誰かがタイムオフをとるときや緊急事態の時のために、誰かがすぐカバーに入れるようにしておくことが理想とされています。そこで、各個人の業務をマニュアル化して、いつでも誰でも(テンプ社員でも)カバーできるようにしています。マニュアルは、部署の管理者が(マネージャー)がまとめて保管しています。
また、人員が不足する場合は、その期間にテンプスタッフを雇うこともあります。通常とは違う事態になっても、社員に必要以上の仕事量を課すことがないように配慮がなされているということなのでしょう。
欧米人の働き方
イギリスは階級社会だからでしょうか、会社にもノブレス・オブリージュ(欧米社会の道徳観で、身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるとされる)があるようにみえます。
一部のエリートたち(高給取り)は長時間労働もするし、早朝から深夜までハードに働くことも強いられていますが、それ以外の人は、1日の勤務時間が終わったら極力早めに帰宅するべき、と考えているようです。
たくさん稼いでいる人間がたくさん社会貢献をして、そうでない人間は気楽にやればいいという考えなのでしょう。
これからの日本人の働き方について
日本では、日常的な長時間にわたる残業時間で命まで落とす人がいますが、もし、日本にもノブレス・オブリージュの発想が少しでも浸透したらどうでなるでしょうか。日本でも劇的に残業時間が減っていくのを期待できるでしょうか。
どうも日本人というのは、勤勉(と言われたい?)すぎて、みんなエリート並の評価をめざしていて、無理な背伸びをしているようにも、私には見えます。
しかし、ご承知のとおり、世の中が全員エリートになるはずがありません。エリートというのは一部の優秀な人たちのことを指すのですから。では、エリートではない普通の評価の社員ではダメなのでしょうか。
それなりの働き方ではいけないのでしょうか。会社の同僚の多くは、エリートとは呼ばれない人達でみんな気楽な普通の社員ですが、むしろエリート達より幸せそうに見えるものです。
日本の会社員は、残業代のための時間稼ぎや無意味な会議(しかも長い)をやめて、なぜ、もっと効率よく働くことができないのでしょうか。本来、企業というのは収益を上げることが目的のはずなのですから、無駄は極力省くべきなのです。仕事のパフォーマンスを図る基準は、オフィスに居る時間のことではなく、結果で評価されるべきです。
もし、仕事量が多くてどうしても残業を2時間しなければならないなら、イギリス人がよくやるように、朝1時間早く出勤して夕方1時間残業で帰宅するのはどうでしょう。朝のラッシュアワーも避けられて便利です。
休暇はまとめてとれる環境を全社的につくって、誰でも年に1度ぐらいは2週間休暇をとってリフレッシュすることをおすすめします。もし、休暇消化率の悪い企業には、行政がさらに厳しいチェックとペナルティを課すべきです。
国は、ヨーロッパの先進国の例などをもっと参考にして、さらに踏み込んだ、具体的で詳細にわたる労働者の保護や長期休暇、残業についての法づくりを進めるべきかもしれません。日本と同じような技術先進国ドイツのように、短時間で効率よく働いて、業績を上げることがこれからの日本人が目指すところなのだと思います。
そのためには、まず、さまざまな側面のマインドセットを変えていくことから始めていかなければならないでしょう。この辺で、「日本人の価値観」、というものを考え直せば、世界一ゆとりのある国民になるのも夢ではないはずです。